2011年12月18日

「議論やディベートと、論理的思考との関係」川村渇真著

「議論やディベートと、論理的思考との関係」川村渇真著 「知性の泉」
http://www.st.rim.or.jp/~k-kazuma/TH/TH185.html

《動機》
偶然見つけたこのサイトに、「ディベートは論理的思考と相反する」ということが述べられている。数年前にディベートの会に1年ほど参加して、ディベートを学んでいたので、この主張に驚いた。これまで、ディベートは論理的思考を鍛えるのに大変有効な手法だと考えていた。そこで、もうディベートのことを忘れかけているので再勉強のために、この川村氏の主張を検証してみたい。

一方、川村氏のサイトでは、主張の論拠が全く示されていない。ディベートが教育的に欠陥のある方法だと言う、重大な主張をするからには、其の論拠となる文書、書籍を十二分に開示して欲しい。
書籍と比べてネットの優れた所の一つは、リンクと言う優れた機能によって、誰もが論拠となっている文書を当該サイトで直ちに、詳細に確認できる所である。書籍の場合、最後のページなどに関連書籍が掲載されているが、一般的にはこれらの書籍を購入したりして読むことは困難である。

1.ディベートでは、「論理的ということの中身」を教えていない。
 ※ディベートでは、論理的に話すと言うことを重視している。
  証拠:
  @ウィキペディア「ディベート」
    米国方式は、論理性を重視し、英国式は修辞性を重視している。
  A全国教室ディベート連盟
    http://nade.jp/first/index.html#debate
  B「2007年度第3回日本語特別講演会 『論理的に話す』緒方智幸」
  http://www.koryu.or.jp/nihongo/ez3_graphics.nsf/0/46282a2919d98c4c4925730c003172f0/$FILE/ogata%20sensei.pdf

2.対決作業は論理的思考とは逆の行為である。
  1)お互いに主張するのは、自分の立場から見た良い点であり、相手に指摘するのは、相手の立場の悪い点だけだ。
    ※確かにこの通り。だが、だからと言って論理的思考ではない、とは言えない。
  2)調査の段階で自分の立場に都合の悪い材料を見つけても、それを自分から出すことはしない。
    ※確かにこの通りだが、自分の立場の弱点を見つけたら、其の弱点に対する防衛の論理を
  3)ディベートでは、お互いの立場を固定し、最良解を求めようとしない。
    ・論理的な思考では、様々な視点で検討し、最良解に少しでも近づけようとする。
     A案とB案との相容れない主張で始まっても、お互いの良い点を集めたAB混合案や、新しいC案を導き出すのが、論理的思考であるから。
     ※最良解を求めるか否かと言う議論は、「論理的な思考」であるかどうかとは無関係である。AB混合案や新しいC案を導き出すのは、A案、B案の優劣を議論した後、別な場で行えば良いことである。そして、A案、B案、AB混合案、C案の比較検討を行うために、再度これらの案の内から適切な組み合わせを決めてディベートを行えばよい。川村氏の「論理的な思考」の定義は、拡張し過ぎだと思う。問題を解決するための手段としてどのような選択肢があるか議論して決定するのは、政策論議、とでも言うもので、ディベートの前に行う議論ではなかろうか。

3.ディベートで論理的思考を邪魔するセコイ行為という悪い癖が身についてしまう。
  1)自分が支持する内容の欠点を見ないで、良い点ばかりを主張する。
    ※自分が支持する内容の欠点を正しく理解して、其の欠点を防御する理論を考え出すのも、ディベートの重要な部分である。
     例えば、否定側の主張に対する反駁の時にこの防御理論が必要になってくる。
  2)相手が支持する内容の欠点ばかり指摘して、良い点を無視したりする。
    ※良い点を無視しないで、其の良い点の欠点を探すのもまた、重要なことである。一般的に言って、完璧な選択肢はあり得ず、何らかの欠点を内包する。実際の政策実施においては、其の欠点を何らかの形でカバーする補助的な施策が必要なので、このようなあら捜しのような検討もあながち無駄なことではない、と思う。

4.ディベートで身につく論理的思考
  1)相手から指摘された事柄に対して論理的な反論をする必要がある。こういう、狭い意味の論理的思考が身につく。
  2)相手が提示した解決方法の欠点を探す能力は身につく。
    (ただし、上手に探す方法は教えないので、高い能力には達しにくい。)

5.質の高い議論に必要な能力は、ディベートでは身に付かない。
  質の高い議論に必要な要素は次ぎのもの。これらは、どれ一つとしてディベートでは教えていない。
  1)課題の全体像を適切に把握する。
  2)適切な流れで検討を進める。
  3)重要度を考慮して検討する。
  4)議論内容の漏れを検査する。
  5)各部で適切に評価する。
  6)出来るだけ最良解を求める。
  7)第3者がレビュー可能な形で資料をまとめる。
  ※
   上記の6点は、何れも、小生の拙い、短い経験によるが、ディベートのOJTで身に付ける事項だと思う。

6.ディベートの本質
  検討内容の良し悪し追及せず、相手を打ち負かすための能力が見に付く方法。
  (大事なのは、相手に負けない能力ではなく、物事を適切に検討及び議論する能力。)
  (ディベートは、大まかに言って、論理的思考と相反するものである。)
  ※
  ディベートに対する取り組みの姿勢によっては、上記のような問題も発生するだろう。指導者の資質の問題になるだろうか。
posted by 平塚寅彦 at 16:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 1 哲学・心理学・宗教 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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